この話はどこにでもいる青年が社会に出て一人前の社会人として成長して行くというとてもオーソドックスな題材を取り扱っている。
もともとは2ちゃんねるのVIP板というところで立った多くのスレッド中の一つにすぎなかった。VIP系のブログで取り上げられるとすぐにその面白さで話題になった。
自分はまず題名の面白さに引かれ「愚痴スレだろう」くらいのつもりで見たのだが、思いの外、面白い文章に引き込まれてついつい時間を忘れて読んでしまった。
いじめによって高校を登校拒否、そしてニート、引きこもりになった主人公が紆余曲折を乗り越えて成長していく。
主人公を立ち直らせる家族の一言、奇妙で複雑な会社の人間関係。一見オーソドックな物語が主人公の一途な性格と個性的な登場人物のおかげで笑いあり涙ありとエンターテイメントに飛んだものになっている。
IT関連の過酷な労働環境というまさにに2000年代を象徴する会社を舞台としていることも興味深い。
そのあまりにも凄惨な描写にスレッドの住人達からは、「IT関連の会社の内情を暴露することになり業界内で問題になるから書籍化は無理」とまで言われたほどだ。プログラマという仕事の過酷さの実体を知りたい人にもお勧めかもしれない。
個人的にはこの話が世間的に話題になって開発現場の環境改善がなされればと思ったりもする。
この2ちゃんねるのスレッドは長い期間をかけて続いたのでファンがどんどん増えて行った反面、注目度もアップしてアンチも多くなりスレッド存亡の危機か?と思われたことが幾度となくあったようだ。
それでもスレッドの住人達の応援などによりめでたく完結となったのはやっぱり話が面白かったからだと思う。
中にはこの話がネタだとかフィクションだとか悪く言う人もいた。しかし別にそんなことはどうでもいいのだ。嘘であろうと本当であろうとこの話が面白いことには変わりない。
ここまで読んだ人は題名の印象で「仕事が大変すぎて限界を感じる話」と思うかもしれない。そう、それこそがこの話の巧妙なレトリックなのだ。
最後の結末を読んだ人だけが題名の中にある「もう限界かもしれない」の限界の真の意味について、理解できるというからくりが仕掛けてある。その見事な伏線の回収には思わず「やるなあ!」と手を叩いてしまったほどである。
是非この話を読んで主人公と一緒になって初めて、社会人になったときのあのドキドキや家族や仲間の大切さを感じて欲しい。そして衝撃のラストを笑いと涙で締めくくって欲しいと思う。